648 novel

小説の話題など色々

山羊と夢とか

灰色の世界を夢にみて

青の世界を夢にみて

目を醒ませばここに

また冷たい朝日が

越えられない柵

 

山羊は坂道を駆け上がる

目を血走らせて涎たらし

首を左右前後に

草を蹴って苦しく

胸は破れそうで

汚れた毛並み

いままさに

茨の柵に飛び込む

引っかかれた血と

その向こうに

 

灰色の世界とノイズ

薄気味悪い黴だらけの

悪夢のような

いや悪夢ではなく

現実

 

だれもが本当は帰りたい

赦されるまで振り向いてはならない

息の詰まる宇宙空間に

いるんじゃないかって

そういうくだらない

くだらなすぎる妄想は

 

夕立の青い臭いと

吐き気と膝の痛み

夜が煙ってくると

いつもうれしくって

また夢を見たくなって

灰色の世界

青の世界

重力がなくなるんだってよ

 まだ物に重さがあった頃の話だ。

 おれは同じアパートに住む、白谷さんという女性と、ひょんなことから飲み友達になった。

 その夜も、白谷さんは灰色のトレーナーに、アジアっぽいカラフルなロングスカートを穿いていた。

 二人とも、シンハービールをラッパ飲みしながら、テレビを観ていた。

 くだらないお笑い番組にイチャモンを付けながら。

 部屋の真ん中の座卓には、細い果物ナイフが銀色に光っていた。

 絨毯には、枝豆が紙皿に載っていた。他には、黄金イカとポテトチップスもあった。

 ビーズクッションに身を沈めていた白谷さんは、マルボロメンソールに火を点けて、云った。

「ねえ、あの話、笑えるよね。重力なくなるってやつ。ありえなくない? あたし、日本酒を噴いたんだけど。きのう、パスタ茹でてるとき」

 料理をしながら酒を呑むな、とは云わず、おれはうなずいた。

「ああ、重力の話ですか。どうやら、本当みたいですよ。近頃、物が軽くなってるっていうのも、事実ですし」

「あのさ、《ですし》って言葉、止めてくれない? イライラするんだよね、それ」

「そうですか。でもね、敬語にしてると、回避しきれませんよ、たぶん」

「タメ語でいいよ」

「いや、あんたそれで先週、切れたじゃないですか。敬意を払えって」

 そこで白谷さんは体を起こすと、右腕を伸ばし、赤いガラス製の灰皿を引き寄せた。灰が落ちそうだから、少し急いでいるようだ。――しかし、その甲斐もなく、長い灰が絨毯に落ちた。

 大して慌てもせず、白谷さんはため息を吐いた。

 なんとなく、『待っている人間』だという感じがした。

 そうだ。

 白谷さんは失踪した婚約者の帰りを待っていた。

 やばい人たちに債権が周り、逃げるように失踪した彼氏のことを、四年間にわたって待ち続けていた。

 待っている人間の、疲れや痛みが、生活のはしばしに見えた。

 首に絡んだほつれ毛や、台所のかびたマグカップに……。

 ねえ、と云ってから、白谷さんはけらけらと笑い出した。

 ねえ、重力が全部なくなったら、タバコ吸えるの? 吸えるのか?

 知りませんよ。

 わかるでしょ、きみ、賢いから。

 わからないですよ。

 すると、白谷さんはテーブルの上の果物ナイフに手をのばした。

 なぜですか?

 と、おれは聞いた。

 だってさ、重さがなくなるのよ。凄くない?

 

おわり。

純文学作品の構造

または、純文学ぽい仕上がりにするための執筆マニュアルです。

  1. ストーリーはシンプルだが、裏のメッセージが浮かび上がる絶妙な大道具と配役がある。カフカの城、芥川の河童などは、一見シンプルでナンセンスな舞台だが、奥に深く鋭い問題提起がある
  2. エピソードはそれぞれ完結し、余計な伏線がない。ややこしい人間関係や背景があると面倒になって楽しめない。純文学の読者は刹那性を求める
  3. エンディングは、死ぬか振り出しに戻るかが多い。根本の問題が解決する話は少ない。エンディング自体がたいして重要ではない
  4. 取り上げるテーマのおもしろさ、文体や構成のおもしろさ、社会への批評性。この3要素のうち、2つを持っている
  5. 基本短い。長くても独立したエピソードが短編的に入っているだけ
  6. 一人称が多い。三人称の場合は、物語性がある中間小説に近づくか、メタ記述(作者の意識が見えたり、登場人物や舞台に対する批評)的なニュアンスが出てくる
  7. いいことやいい話を書こうとしない
  8. 陳腐な直喩の利用には特に厳しい業界。ひとつひとつのレトリックが、世界初でかつおもしろいものであること(翻訳小説だと多用される直喩だが、国内では厳しい。騙されないように)
  9. センテンスはたまに長くしたり、あえて読みづらい感じにするのもテクニック、というか芸

国内の純文学作品と呼ばれるものは、こんな構造が多いです。参考までに&自分メモ

 

チューナーとなる作家

自分の文章のチューナーとなる作品があると、ちょっと安心できます。

僕の場合は、堀江敏幸さんの文章を読むとペースを取り戻せます。

 

あの上品で柔らかいタッチを模写すると、般若心経を写経するような気持ちになれることうけあい。

 

しかし、翻訳ものをチューナーにするのは危険だと思います。

春樹病ですね。

 

翻訳された小説は、リズムとか言い回しが独特でクセになりますね。

特に、海外の作品だと直喩が増えるので、そういうのは模倣したくないですが。

 

そういえば、ある知人の……Nさんの小説を読ませてもらったとき、直喩が多すぎるという指摘をさせてもらいました。

人の表現物に対して決めつけた意見を言うのもダメなんですが、やはり、ほどほどにしないといけないですね。

 

そんなわけで、日本国内の作家をチューナーにするとよいと思います。

の、を続けてもたぶんいい

接続詞の『の』が3つ以上続く文章はタブー視してきたけど、別に気にならなくなったね。

 

私の家の玄関の脇に犬小屋がある。

 

別にいい。

と、思い込んでみる。

自分のリズムを見つける方が大事かと。

考えすぎると書けなくなる

書きたいことを熟成させすぎると、やがて書きたいことは、書くべきことになる。

すると、書かねばという強迫観念におそわれ、書けなくなる。

こんな感じがします。

物語の芯を捉えられているなら、熱のあるうちに進んでいきたいですね。

サブブログを分けました

今まではひとつのブログで幅広いジャンルの記事を書いてきましたが、

そちらがITや批評などの記事に特化してきたので、個人的な趣味の、小説に関するネタをこちらに書くようにしたいと思います。

 

▼メインブログ

www.kyamaneko.com

創作や小説の話題についてはメインの方に書かないようにしていましたが、ソレ系のネタはこちらにします。

しばらく平行してやってみますね。

 

こちらのブログでやりたいこと

  • 小説の感想
  • 創作関連
  • ですます調
  • 比較的ライトなネタ

 

というわけで、裏面という感じでやっていけたらと思います。